U LIFE MAGAZINE isssue175
「林嘉欣×鄭伊健 猜・情・尋」

鄭伊健(Ekin)と林嘉欣(Karena)の今回のインタビューでは、雰囲気は映画『親密』のように抑制され含蓄のあるものでは全くなく、楽しくおしゃべりな伊健は、カリーナを笑わせてばかりいる。
初めて会った時から、四度めのご縁とその間柄の進展具合について話してくれた。それぞれの経験、いわゆる「困難な恋愛」を乗り越えてきた者同士として心を開いている。
カリーナはパリへ留学したことを挙げ、また伊健の夢探しの方法を引き出す。
友人になって一番大事なのは、あらゆることについて、考えの違いでも何でも話すことだ。
君は文芸 僕は商業
伊健とカリーナは、動と静、性格もまるで正反対だが、その関係は微妙で、4回共演し(『恋の風景』、『雙雄』『後備甜心』『親密』)、監督の目にもお似合いに見えている。嘉欣の元彼、陳光榮は伊健の音楽プロデューサーでもあり、二人はまた同時期に違うカメラのCMキャラクターを務めている、冗談で言うところの「ライバル」だから、友達になれないのは仕方ないかもしれない。
U(U LIFE MAGAZINE):四回目の共演はいかがですか?
E(鄭伊健):初めての時は親しくなくて、コミュニケーションできなかった。二回目は彼女がとてもぼんやりしてた。三回目には一緒に苦難を乗り越えて、とても楽しかった。四回目は、また彼女か!
K(林嘉欣):初めての時は『恋の風景』でした。
E:彼女は僕にかまってくれなかった、本当に散々だったよ。
K:ええ、その時は伊健が嫌いだったから。
E:僕は商業俳優だからね。
K:そうじゃないの、『恋の風景』の時は私は阿森(伊健の役名)に夢中でないといけなかったのに、伊健は現場に来ては冗談ばかり言ってたから不真面目だと思って、だから嫌いだったの。時々監督と俳優が一緒に食事をするときには、私はいつも自分の殻に閉じこもって、彼への幻想をキープするようにしたかったの。
E:その時は直感的に僕も気づいてた。でも『雙雄』の時には役はもう違うのに、彼女は銃撃戦の撮影のときもぼんやりしてたんだよ、はは。『後備甜心』では新しい監督に出会い、僕たちはみんなで一緒に問題を解決して…結局は困難を共にしたんだよね。二年ぶりに会ったけど、彼女が大人になっててとてもうれしかった。以前はものの見方がとても一途だったんだよね。
K:そう、私とても頑固なの。
E:わかってるよ、彼女はインテリだからね。
K:(伊健を叩いて)ちょっとー!
E:ほんとだよ、僕にはわかってるんだ。彼女は最初からすでにハイレベルなところにいて、視点もおのずと違うんだ。この数年彼女はいろんな人やものに接する機会が多くて、例えば大陸ロケのルールとか、「どうしてこうなの」からだんだん慣れて受け入れていくようになった。たとえ受け入れられなくても、少なくとも経験にはなるでしょう。
K:私はこの二年で心がオープンになったわ。いろんなやり方を受け入れられるようになったの。
U:個人的にはいつも連絡を取っているんですか?
E:実は、僕たちの性格は両極端で、プライベートで接することはほとんどないんだ。共通の友人を通して無事を知るだけで、でも一本また一本とと共演していたら、相手のことを理解するようになった。僕は以前はクランクアップで相手役とハグして終わることはなかったんだけど、彼女の外国式の流儀に染まったよ。僕たち中国人はとても保守的で、手を振って「じゃあね、バイバイ」で終わりだからね。
K:そうなの?私に言ったことないじゃない。伊健はとても可笑しいのよ、以前車を運転する時には、彼女以外に助手席には絶対座らせなかったの。
E:ずっと前のことだよ、もう直したよ。
K:何も改めなくても。とても特別なことよ。
E:その時は社長にさえそうしてたんだ。彼女はまだそのことを覚えてるよ。
U:嘉欣は伊健の「今を生きる」という生活態度に影響されることはありましたか?
K:『親密』の撮影はわずか16日間だったけれども、毎日とてもすばらしくて、伊健のことをどんどん好きになったわよ。
E:僕だって悩みがないわけじゃないよ、嘘みたいだけど40歳の男だからね。芸能界にいる身だけれども、こういう悩みはオフィスの背景とセットになっているものかもしれない。『親密』に出演して、一番うれしかったのは、自分に中身が何もないわけじゃないって証明できたことなんだ。
芸能人の恋愛トークはタブーではない
岸西脚本・監督による『親密』はサスペンスの手法を用いた恋愛映画で、時間の経過は逆転し、直截的な言葉で愛を語ることもなく、主人公たちの恋愛はいつ始まったのか、いつ変わったのかさえもはっきりとした説明がなく、観衆は自分でこのオフィスに閉じ込められた恋愛の詳細を想像しないといけない。
U:ストーリー上にはトムとパールはいつ恋愛が始まったのか明確な描写がありませんが、お二人はそれぞれどう理解されてますか?
E:僕はきっとトムはパールに初めから好感をもってたと思うんだ。上司として、一日にこんなに多くの人の面接をして、どうして彼女だけを雇ったの?きっと好感をもってて、かなり気になってたからだ。
K:男の人って…。
E:この男性はただ生活に彩りがほしかっただけなんだよ。生活はこんなにも過酷で、仕事が終われば女房の顔、出勤すれば駱應鈞の顔で、どちらも退屈だったんだな。最初はただ目の保養をしたかっただけかもしれないが、予期せぬ火災事故が起きて、その時から彼女は自分の心の中に入ってきたんだ。心変わりとか、不倫とかって多くの場合は出張の時に発生するものと思ってない?それではいい感じはしないし、どうにも落ち着かないよね。
K:私は、もし火事で屋上に上がることがなければ、パールは心を動かされることはなかったと思うの。トムと彼女はずっと仕事の上司と部下の関係で、そんなこと考えている暇はなかったわ。トムは仕事上では強い立場にいたのに、突然自分の心配事を話しだした。その弱みを見て、かえって心が惹かれ、彼を親しく感じるようになったのよ。屋上は私たち二人だけの、他の同僚たちとは分けあえない秘密の思い出に変わった、つまり一線を越えたということよ。
U:女性は他の人と秘密の思い出を共有したり、一線を越えるということに対して比較的敏感のようですが。
E:男性だって敏感なんだよ。ただ、このような鍵がいつ差し込まれて心が開くのかは永遠にわからないだけ。自分の経験からいえば、ある人が現れて、最初は将来どうなるかなんてわからないけど、10年経ってようやくその人が今ここにいる人なんだってわかる。世界はこんなにも広い、この人がなぜまた現れたか、そして自分と合うのかどうか?予想するのはとても難しいよ。
U:香港映画では、オフィスにおける上司と部下の恋愛についてシリアスに語られることは少ないですね。
K:オフィスラブは実際の生活にとても近いし、ついにこういうストーリーが公に語られるようになって、本当によかったわ!
E:僕はオフィスワークの経験がないけど、芸能人にはもともと「同じ会社の所属だから恋愛禁止」なんて規則はないから、僕はこういう恋愛には反対しない。好きなら付き合うべきでしょ?自由だよ。
K:そうね、私たちは自由の身だわ。
E:僕は、こういうのはかえって香港の文化だと思うんだよね。香港は土地が狭く、僕らが受けるストレスはこのことに尽きる。日本にもオフィスがあるとしても、香港みたいにこんなにゴチャゴチャしていないと思うんだ。
生活は必要 生存は止められぬ
現実は思い通りにならないものだとしたら、逃げ出したいと思うのも無理はないかもしれない。若いころはパリに住んでいたが、金のやりくりに困窮した作家のヘミングウェイは、息切れしつつもなおも遊びをやめられず「出歩けるうちは遊んだほうがいい」と語っている。
『親密』の撮影に入る前、嘉欣もパリへ遊学して演劇を学んだが、毎日登下校のたびに美術館へ行き、週末にはヨーロッパ各地へ気晴らしに出かけ、出発前すでに4か月分の為替を現地に送ったほどで、夢探しの決心のほどがうかがえる。
U:さっき嘉欣とパリ遊学の話をしていたんですよね。
E:僕も勉強したいと思ってたことがある、でも遊学じゃなくて、料理の勉強をしたいと思ったんだ。以前、小春と撮影していたときに、「蘭州ラーメン」の作りかたを覚えたかったんだけど、時間がかかるので断念したんだ。
K:あはは、私、食べたことないわ。あなたは決心すればいいだけ、やりたかったらやればいいのよ。
E:自分で学びたいなって思っただけじゃなくて、香港の飲食業はだんだんひどくなってきてるからでもあるんだ。食べ物を扱うのに心のこもった人がいない。だから自分で店舗を借りて、料理を愛する人材をとどめたい。どの町にもそういう場所ができたら楽しいだろうと思うよ。
K:私が勉強したいと思った事はほんの些細で、とても個人的なこと。自分の興味のあることを勉強したら楽しいだろうなって、たとえば芸術史とかね。
E:僕は木工を学びたいんだ。香港のこういうコンクリートジャングルにいると珍しいことかもしれないけど、カナダにいったら普通のことだからね。僕は台湾の女の子はすごいと思う。嘉欣や、舒淇のようにみんな料理ができるよね。香港の男は、僕のように、納戸を開けたこともなくて、ほぞの位置とは何か、なんてことも知らないからね。
U:伊健は嘉欣が遊学から戻ってきて、どこが変わったと思いますか?
K:(アニメ声で横から口をはさんで)可愛くなったョ!!
U:伊健は香港の生活についていろいろ意見があるようですね。
E:何て言ったらいいかな?香港人は餓死はしないけれども、彼らのは「生活」じゃなくて「生存」だよね。
K:私はとてもラッキーだと思う。カナダで生まれて、子供のころは芝生を踏み、木登りして遊んだわ。育った環境はとても自由で、香港にきてから数年してようやく、友達の中には小さい頃は一つのベッドで何人もの子供と一緒に寝かされていて、プライバシーもなかったということを知ったの。
E:言えば言うほど辛いね。
K:良いことも悪いこともある。外国では目上の人という概念がないの。両親が歳とったら老人ホームへ行けばいいと言い、それを恥じる気持ちがないわ。台湾から香港へ来て、確かに経験は豊富になった。私も生活のペースを重視してる。仕事は心をこめて、生活には力を入れて、ペースは守らないと。
E:うん、僕も自分のペースは守ってる。いまの段階はとても楽しいし、何でも少しあれば事足りるんだ。家族がいて、時間があって、居場所があればそれでいい。
K:この前台湾に帰ったら、朝から母と姉と妹のひっきりなしの笑い声で目が覚めたの。以前の私だったらイライラしただろうけど、その日は可笑しくて、嬉しかったし安心もしたわ。
<完>

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