Baccarat 12月号(英文版)
魅力的生活

イーキン・チェンという人は、99%映画の中で見るのと同じ人だ。―背が高く、体格が良く、ハンサムで少年のような顔に、さらさらの髪。彼は現場に一早く到着していたので、期せずしてチャイワンの工業ビルのエレベーターホールで顔を合わせることになった。そのビルは、写真家のハーリム(イーキンの友人の一人)の撮影スタジオでもある。イーキンは雲から出た山のように頭ひとつ高いのと、広い肩幅をしていたのですぐにわかった。彼はおしゃべりで、フレンドリーで、魅力的な好青年だ。41歳になった彼はこう語る。今の生活と、恵まれた肉体を幸せに思うと。成功も美しい恋人(ヨーヨー・モン(蒙嘉慧)は彼の恋人となる女優としては三人目にあたる)も手に入れた彼が言うのも無理はない。
イーキンは、アンドリュー・ラウ(劉偉強)の監督した黒社会映画"Young & Dangerous(古惑仔)"シリーズで一躍スターダムにのし上がるが、それ以前の若い頃にCMと、テレビタレントからそのキャリアをスタートさせている。そのルックスは市場からも歓迎され、カントンポップ・スターの一人としても地位を確立している。残念ながらレコード
産業の停滞により、しばらくは彼の歌声を聴くことはできないが(彼が最後にリリースしたアルバムは2004年の「Discover」)。彼自身は来年コンサートを開きたいと思っている。最近は俳優として仕事をしながら準備運動をしているところだ。

大スクリーンの世界に入って15年、彼はついにかわいらしい少年のレッテルをはがすことに成功した。(彼の2本目の出演作品は1993年、皮肉にもタイトルは"Boys are Easy(風塵三女侠:ロレッタ・リーのピーピング・キャッツ)"だった。)昨年最初の仕事では、テレビドラマの役作りのために頭を丸刈りにして、それから、シンガポールの映画監督ケルビン・トンのホラー映画"Rule No.1(第一誡)"で厭世的でアンチヒーロータイプの警察官を演じるために体重を増やした。
イーキンはイメージを変えるということが容易でないことを認識しているが、彼はこの挑戦と得られた経験に満足している。"Rule No.1"は(トン監督によるとこれはゴースト映画ではないとのことだが)、今まで作られたことのない最高のホラー映画というわけではないだろうが、イーキンとショーン・ユー(余文樂)の強烈な演技によって、今年の韓国富川国際ファンタジー映画祭の主演男優賞を獲得した。
「香港の監督は俳優のために、簡単なシーンの撮影から始め、次に違うシーンの撮影に入る傾向がある。でもトン監督は違った―彼はきわどいシーンをまず撮りにいくんだ。」通訳を介してイーキンは言う(彼は広東語で話すのが一番表現しやすいため)。「彼はまた、俳優たちに役作りのための情報をインプットさせる―映画の撮影が始まる前に、役作りをしてどう演じるか決めてしまわないといけない、だから僕らは頭がおかしくなりそうだった。そのようなやりかたは、僕やショーン・ユーのようなハンサムなだけの男を演じてきた俳優にとって180度の方向転換だった。でも僕にとっては、全エネルギーを注いで今までとは違う、色彩豊かな役を作りあげることができたのだから、幸せなことだ。」
彼の次回作、「親密」は2009年上旬に公開予定だが、新しいイーキンの発見という「重要な証明書」になることは間違いない。脚本家アイヴィー・ホー(岸西)の監督デビュー作で、イーキンとカリーナ・ラム(林嘉欣・四度目の共演となる)は市井の人々のオフィス・ラブを演じる。「ここでは役のニュアンスや個性を考える余地を与えられた、キャラクターの研究の場でもあった」そう言うイーキンは嬉しそうで、思いがけない成功、とも言った。この映画は、物語が過去に遡る形で進行する。プレミア上映となった、10月の東京国際映画祭でも高い評価を得ている。「コメディ映画でもアクション映画でも、こんなチャンスは得られなかっただろう、けれども『親密』では監督はカメラを長まわしさせ、僕ら俳優にさらに表情による演技を要求した。そのことは、僕たちが演技に入る前に予めもっと多くのことを考えておかなければいけないということを意味していた。」
『第一誡』の後、イーキンはまた苦しまなければならなかった。その後、映画『風雲2』の撮影のため再びタイへ飛んだ。1998年作成のパート1は美しい特殊効果によって知られ、イーキンと共演のスター、アーロン・クォック(郭富城)(アーロンといえば『風雲』で裸で滝に打たれる姿がすぐに思い浮かぶが)とともに地元の観客の支持を受けた。
『風雲2』はパン兄弟(1作目ではアンドリュー・ラウが制作指揮を執った)によって、来年もっとも期待されるカンフー映画として約束されている。10年を経て、マンガ本の空想世界から風と雲の更に立体的な人物像に迫る。実際のところ、風は魔物に迫られてダークサイドに堕ちてしまう。
これは、もっと深くキャラクターを発展させるチャンスだった。(比較的人物描写の薄い『風雲』からすると)二人の主役は魅力的だ。また、続編がパート1よりも成功したらさらにパート3を制作するとの話もある。
彼とアーロンは親しいのかと聞くと、イーキンはこう答えた。「実際はそうでもない。僕たちは第一作でキャスティングされただけでラッキーなことにこんなにも成功している。お互いを俳優として尊敬しているし、再び共演できたことは楽しい経験になった。お互いに多くを経験してきたから―10年以上にわたって、仕事や私生活での浮き沈みを―、だから今ではより強い絆で結ばれていると思っている。」
イーキンは、ラウ監督とパン兄弟の監督スタイルには非常に大きな違いがあると言い、ラウ監督は俳優にはもっと自由に演技をさせると言う。「パン兄弟は、二人の頭の中だけでシーンやテーマについて練り上げ、他の人には知らせないし、他の人から何か言われて変えることはしない」とイーキンは言う。10年の時間の経過による驚くべき技術革新によって、人気コミックの設定を柔軟に縮小させた形で実現されるだろう。
「ラウ監督もパン兄弟もどちらも良い監督、他の香港の監督と違って、ランチやディナータイムのために仕事を中断して、十分な休憩をくれ、スタッフのケアをしてくれる。」とイーキンは笑いながら続ける。どちらの監督が良いですか?「それはトップシークレットさ!」彼は英語で即答した。
イーキンは、最近の俳優としての自分の進歩を生活体験からきているものと思っている。「実際、俳優というのは受け身なんだ」彼は言う。「普通は監督が俳優に尋ねたりしない、俳優は言われたことに従ってやるだけ。香港では、俳優は自分から出て行ったりやりたい役を探しまわったりはしない。俳優の最近の仕事や表現を見て、監督がその役に合うかを決める。」
50本以上ある出演映画で、意外なことに彼はジングル・マー(馬楚成)監督の"Hot War(幻影特攻/ヴァーチャル・シャドー)"―一般的に批評家からは酷評されている―をお気に入りに選んだ。「『マトリックス』以前に最新テクノロジーを扱った映画として、本当に革新的な映画なんだ。こういう映画を撮る予算のない香港映画としては冒険なことなんだ。」彼は付け加える。「ぼくにとっては、映画製作そのものが夢を実現させることになったからね。」(読者のお気に入りになるのは、目の保養となる、マー監督の作品の中でもおそらくもっと軽い映画―颯爽としたトニー・レオン(梁朝偉)やケリー・チャン(陳慧琳)と共演した"Tokyo Raiders(東京攻略)"だろうか)

身振り手振りで話すイーキンは、最もまじめで印象的な話し手である。カジュアルな黒のカーゴパンツをはいて、ハイカットの黒いカンバス地のスニーカーをはき、ユニセフのチャリティマラソンのTシャツを着て、記者会見の場からそのままここまで来た。彼自身は走らないが、週二回、彼女のヨーヨー・モン(蒙嘉慧)やTVBの俳優仲間とカオルーンにあるスポーツクラブでバドミントンをして体型の維持をしている(彼はどこでプレイしているのか教えてくれたのだが、パパラッチにまだその場所が見つかっていないという理由でここに書くことはできない)。彼は時計にも興味がある―写真撮影のために、ゼニスの時計を着用してくれている―が、コレクターではない。ひとつだけアクセサリーをつけている―ダイヤモンドがはまったネックレスをつけている―が、これは5年前に自分自身へのごほうびとして買ったもので、以来肌身離さずつけている。
ヨーヨーのことといえば、すでに40歳を超えた彼が落ち着く準備に入ったのか聞かないわけにはいかない。彼の俳優仲間でも何人か、アレックス・フォン(方中信)やジュリアン・チョン(張智霖)らは、最近子供が生まれたところだ。アレックス・フォンは彼のご近所さんでもあり、娘のカーチンはイーキンも「本当に可愛い」と認めるところだ。彼はまだ結婚や子育てのことでヨーヨーと話をしたことがないと言う。「今を楽しんでる」と彼は一言で言う。さらに、「人生の次のステージに無理に進むことはしないんだ。物事は自然にまかせる。それに、今はすべてが不安定で、次の世代を安心して送り出せる世界でもない。ニューヨークにいる僕の従兄が、最近中国から養子をもらったところなんだ。いつか、僕も彼のようにするかもしれない―世の中には親もなく、世話をしてもらえない子供がたくさんいるから。」
年齢は、こののんきな歌手兼俳優には何の影響も与えていないようだ。去年40歳を迎えたとき、彼は突然「特別な感覚」を味わうことになる。常に何かが起こりうる、という感覚だ。「でも自分でもどういうわけか、それが良いことなのか悪いことなのかすらわからなかった。」それでもまだ、彼の身には人生の重大な瞬間は訪れてはいない。
彼の天性の鷹揚さによって、何が起きてもどこ吹く風とばかりに乗り越えていくだろうことは疑いないが。
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情報量が多いのは圧倒的に英文版でしたが、英語の基礎がないので訳すのがつらい・・・。
語学力=単語力、を久々実感。
ここでは『親密』についてもいろいろ話しています。
今出ている雑誌のインタビューはほとんどこの映画の内容についてのようです。後日紹介しますのでお楽しみに。
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