等待入魔(2)
高輝と「300(スリーハンドレッド)」
その当時、香港のCG技術はまだ黎明期にあり、周星馳や劉鎮偉も敢えてCGを使って『西遊記』を作ろうとはしなかったのに、劉偉強は勇敢にもこの難問に挑み、『風雲』を中国におけるCG作品の最高峰に押し上げ、特撮映画の潮流を作ることに成功した。10年後、CG技術の重責は彭兄弟のパートナー、高輝の手に委ねられていた。高輝も監督の一人であるから、彭兄弟が撮影を終えてその場にいなくても、フィルムの上に思いのまま他の特殊効果を加えることができる。これは撮影前にみんなでよく相談し、刀の振りひとつについてもどこへ向けて振り下ろすか、などを決め、みんなの意見を聞いて最良の決定がなされるためだ。
「高輝はすごいと思う。たとえば風が魔物にとりつかれ、僕の体が上から下まで煙に吸いこまれる場面があったのだけど、彼は市販の煙の効果を出すソフトでは飽き足らず、ドライアイスの効果でも追いつかないので、自分で作ったプログラムを探して持ってきたんだ!僕の知っている範囲でも、『風雲』の撮影が始まる前に、彼は既にわざわざプログラムを自作していたんだ!すごいよ!」
「今回は一場面たりともロケはなく、全てスタジオでの撮影で、僕たちはタイで大型の倉庫を借り、その中にジオラマを作って、更にCGを使って風景を作り出した。だから高輝の存在は非常に重要で、画面はきっと問題ないと確信している。特に、僕たちが取り入れた一秒1000カットの高速デジタル撮影、それは『300(スリーハンドレッド)』でも使われた技術で、例えば僕がジャンプした場合、それを通常の速さで上映すれば、たぶん1分は空中に浮いたままになって、とても面白い。だけど、それは使うべき場面に取り入れただけのこと。」
パート2は既に撮影を終え、今は更に長い長いポストプロダクション作業に全力投球している。パート1が原作に非常に忠実だったのに比べると、伊健は、年代が違うから、今回のパート2は細部が違うものになっている、と言う。もっと現実寄りで、さらに多くの場面が演出の力で表現されているそうだ。
「今回の内容は風雲の敗北といえる。風は囚われ、打ちのめされ、まさに監督が言うところの『徹頭徹尾の敗北』だ!敗北の後、風は魔の道へ堕ち、歩驚雲は無名から二つの奥義を学び、一緒に絶無心を殺す。その後風は狂ってしまい、歩驚雲を切りつけ、ついに二人は一気呵成に戦う、戦う、戦う!正確に言えば、場面はたったの6つだけなんだ。『300』みたいに、仲間に入れと誘い、拒絶され、そして戦う。ストーリーは非常に簡単だけど、でもとても明瞭。もし音を消して画面だけ見ていると、一幅の、動く油絵を見ているような感じだ。映画は現実世界に飛び出し、大きな戦いでラストを迎えて、観客は見終わってもまだわくわくするだろう。」
漫画影帝
聶風以外にも、伊健は『ストリートファイター』の阿Ken、『Feel100%』のJerry、陳浩南や華英雄などのマンガ原作の役柄を演じていて、これは監督が彼を選んだものではあるけれども、彼自身がマンガのキャラクターであることを選んだともいえる。数年前からコメディやシリアスなドラマなどへ転換していて、彼はそのことも俳優としての責任として、できるだけ違う役柄を試しただけと言っているが、内心はまだ『風雲』のような映画が一番好きだったのだ。
「本当のことを言えば、映画に出演するようになって以後も、漫画の世界から心が離れたことはないんだ。おかしなことに、漫画の作品を撮るとなったら特に張り切って、わくわくする!表情も特に生き生きするんだ。現代人は現実的すぎるよ、映画はほんとうは夢工場なんだよ。『キングコング』も元はマンガだけれど、でも『キングコング』が一番成功したところは、特撮だけでなくて、古いものから新たに創作してもうひとつ別の世界を作ったこと。チケットを買った観客に、現実から離れて、劇場の中ではワイワイ騒いで見ることができて、見終わって家に帰るまで現実を忘れさせ、ようやく『大変、まだ家賃を払ってなかった!』と思いださせるような、映画を見るってそうあるべきだと思うんだ。映画は漫画に向かって発展していくべき、また実写版古惑仔を撮るとか、あるいはその他の非常に現実的な題材を撮る、とかじゃなくてね。」
以前、『古惑仔』は子供に悪影響を与えるとずっと言われてきて、当時伊健ももう陳浩南をやりたくないと思っている、とも伝えられていた。もし映画会社がまた『古惑仔』を撮らないかと言ってきたらどうするの?
「劉偉強が撮るっていうならやるよ!はは!」
彼を初めて最優秀主演男優賞たらしめた、シンガポールの監督唐永健によるホラー映画『第一誡』ですら、伊健の目にはマンガの要素が濃厚に含まれていると映る。
「もし『第一誡』の1カット1カットをマンガのコマにしたら、きっと死ぬほど怖いと思うよ!監督の撮る画は本当に残虐なんだ。ある場面では女の子に幽霊がとりつくけれど、その後他の人もみんな頭がおかしくなってしまい、ついには彼女が自分のおさげ髪と、他の子のおさげ髪を縛ってみんなでビルの上から飛び降りるんだ!僕は現場で見ていて、内心こう思った『わぁ、そこまでやるのか!』でも、映画の撮影というのは現実離れしているものだ。みんなは監督が変態だと思うだろうけど、漫画の中で起きたことなら、読者はただ怖いと思うだけ、でも怖いほど刺激になるから、もっと見たくなる。」
残念なことに、不況のせいで配給会社も映画館の館主も冒険する勇気はない。幸いにも伊健と余文樂がダブル受賞した効果で、5つの映画館で上映されることになった。宣伝なしという劣勢の下では、興行成績が良くないのは予測済みではある。でも、映画自体に実力があり、ネット上のクチコミによって、興行成績は次第に挽回してきた。「実は、『第一誡』は損はしていないんだ。僕と余文樂にとっては、既に儲けを出したといえる。それは、もともと香港では映画館で上映する予定はなくて、DVDを出すだけだったから。でも脚本を読んで、すごく気に入ったんだ!香港の監督にはこういう発想はない、だから出ることにした。撮影が終わって海外のプレミア上映に行ったら、反応がすごく良くて、その後賞ももらって、香港でも上映されて、十分稼いだよ!香港のマーケットは面白いね、宣伝ゼロで、インタビューもなしでこんなにいい成績が出るなんて、めったにないことだよ!」
(つづく)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)












最近のコメント