MONDAY 269号
ONE ON ONE
鄭伊健「もしも・・・愛があれば」
郭富城が『三岔口』で金馬奨の最優秀主演男優賞を獲得して興奮している。それなのに、この映画の中で主役を演じる鄭伊健はいま放映中のテレビドラマ「随時候命」の宣伝をしている、あなたはこう思わないだろうか・・・。
もしも、愛があるなら。
もしも鄭伊健が自分の仕事に野心があるならば、成績はこんな状態ではないはず。
けれども、外野が、伊健が芸能界でどうしたらいいかどれだけ騒いでみたところで、彼は、自分がどう歩いていけばいいかは自分がいちばんよくわかっている、と言うだろう。
「逆境も順境も、楽観的な態度で迎えている。苦しい気持ちで過ごしたりしない。苦しんでいるときはただ生きているだけ、生活じゃない。だからぼくは苦しんでいる人たちみんなが、低迷期している時は「生活」を選ぶほうに切りかえればいいと思う」
もしも愛があるなら・・・伊健は自分の生活をとても愛している人だと思う。
まだ底よりはいい
「去年、TVBが「随時候命」のCFを撮影した時、飛行服務隊の総司令部を撮影していたら、ある高官が僕のところへ来てこう言ったんだ。『鄭伊健が撮影をしてるけど、髪を切ってしまってからにすれば!』僕は内心、『僕はプロモーションで来ただけなのになぁ・・・』って思った。けれどもその後で、飛行服務隊は誰もやったことがないし、とても面白い、それに俳優をやっているとずっと髪を伸ばしているものだし、いまが規律部隊に入るチャンスなら、髪を切るのも理にかなっているかなと思った。それにドラマでは僕一人だけが髪を切ればいいわけじゃないし、みんなでいい方向に向かって頑張るんだからね!」
『髪を伸ばしていると幸運がめぐってくる』というここ数年の迷信を打破するのは、ドラマのためとはいえそんなに簡単ではなかっただろう。伊健は、今回は切るべくして切った、仕事の成功が髪ひとつで決まるものではないからと言う。
「すべては自信の問題だと思う。昔は僕も、ほかの人から、退屈だから髪を切ったり髪型を変えればと言われてやっていたことがある。自分ではそれが何のためかわからなかったのにそうしていたのは、自分に全然自信がなかったからだ。
けれども今の僕は役に合わせて髪型を変えることはかまわないと思うようになっている。一人の俳優が登る階段として、いろんなことを試して、自分の殻を破りたい。昔はアイドルといったら同じようなイメージにしていればそれでよかった。今は僕がそんな迷信を信じてるって思う人はいないはず、僕が仕事中の俳優だってわかっているよ。」
変化を求めていることを自ら証明するかのように、伊健はここ何年か絶えずいろいろな役に挑戦しつづけている。コメディ、悲劇、三岔口ではずる賢い弁護士さえ演じた。私も、他の人が言うように、伊健が運に頼っていて努力していないなんて思わない。けれども、私が伊健は運に頼っていないと思うもう一つの理由は、彼の幸運が、『三岔口』で低迷期から這い上がって主演男優賞を獲った郭富城に持って行かれたからだ。
「マギー・チャンが言ってたことはそのとおりだと思う、『獲るべくして獲ったのよ!』って。アーロンは今回も犠牲が大きかったからこそ賞をもらう資格があるんだ。それにアーロンは今回の出演で突破したと思う。
だから今回はアーロンが谷底に飛びこんだとは思わない。僕もアーロンも同じTVBの出身で苦労してデビューした。みんなはいつまでも表面の華やかさだけ見て、僕たちの裏での努力を感じないからそんなことがいえるんだ。」
高い所にいても試練は乗り越えられない
「僕はもともと好調も停滞もないと思っている。これが人生の階段ってものさ。『古惑仔』に出演した時には外国人にまで知られるようになったけど、だれも政府の広告に出てくれとか、あるいはいまやってる飛行服務隊のことを勉強してくれなんて依頼をしてくれなかった。だからすべて物事には両面あるってこと。あなたが幸運だと思いこんでいることは、たぶん危険なスタートで、停滞と思っている場所からゲームが始まるところなんだ。」
すべては表面だけで見ることができない、この言葉は、ずっと停滞期にあったと自身が認める伊健の口から出ると、これ以上ぴったりなことはない。
「僕はいつも、自分の経歴が香港人そのものだと思ってる。97年になると香港人がマンションの売り買いに熱心だった時のように、全ての高みに上り詰め、97年を過ぎると、全てが落ちこんでしまった。本当は、僕たちはずっと一生懸命努力して仕事をしてきたのに、借金さえ背負い込んでしまった。だけどぼくはもともと、やばい、どうしよう、と思ったことはなかった。以前にも停滞期は経験してきた、今の苦労くらい何だ、と思っていたよ!」
自然にまかせていれば安心、というのは伊健の一貫した態度だったけれど、彼のそういう性格が、他の人たちに『伊健は遊んでいるだけ、目標も野心もない』と見られるようになってしまったのも無理はない。
「僕には僕の態度がある、努力だってしてきた、けれどあなたに話す必要はない。現場の人たちはみんな、鄭伊健と仕事をするとストレスがなくていいと言う。僕はこのような方法を取ることを、仕事の過程で暗黙の了解として身につけてきた。人それぞれ性格はちがう、これが僕のやりかたなんだ。」
人それぞれ対処のしかたは違う、だから伊健はジジとの恋愛の件でパパラッチに対する時も、泰然と対応する。
「僕とジジの関係は落ちついている、でも何で間を空けずに次のネタが出てくるのかわからない。僕は自分がよっぽどネタになる価値があるのかと思うよ!今回の盗撮も逃れる手だてはなかった。価値があるからこういうニュースになるなら、みんながこういうニュースを見なきゃだめだってこと?だから、自分のことだけに気をつけて、仕事の時も家にいるときもきちんとすれば何も怖くはない。この前は僕の家での様子を隠し撮りされたから怒ったけど、やるほうにも人格的に問題があると思う。でも、彼らは半年間ずっと追いかけてきたからこんな写真を撮れたんだろう、残りの時間は僕と両親のとか、ジジと食事してたのとかで、単独で見出しにならなかった、たぶん彼らのほうがもっと怒ってただろうね、はは・・・」
僕には僕の生きかた
「人生なんてこういうもの、名声が利益をもたらすなんてこと、本当はない、そういうものを得た後、問題が起こらなかったことなんてないでしょう?」
鄭伊健はいい禅問答をする。
たぶん性格か、あるいは経験のなせるところか、でもこの世の中での道理は人によってちがう。それぞれに生き方があり、劉德華が努力するような生き方が、芸能界で生き残る唯一の道だという人もいる。
「僕はいまの仕事、愛情、家庭、私生活、自分の空間、どれもうまくいっていて、たぶんみんなをがっかりさせると思うけど、実際のところここ数年の生活には満足しているんだ。」
伊健、私はあなたの仕事に対する見方を探ろうとひどい質問をしたけれど、本当はあなたの生き方を応援しているよ!
(完)